大阪万博に行ってみた (視覚障害者目線の大阪万博)

いつもご愛顧ありがとうございます。
※この投稿は鍼灸とは関係ございません、興味の無い方はスルーしてください

野球にするか、万博にするか
6月11日・12日、店舗の休みを利用して大阪に行ってきました。
ベイスターズが京セラドームで試合があったため、ずいぶん前から大阪行きは決めていました。平日ナイターということで、せっかくだから話のタネに悪評ばかり聞こえてくる万博も見てみようか、という半ば興味本位で計画に入れてみました。
ところが、いざ開幕すると意外にもポジティブな評判が目に入るように。特に夕方以降のライトアップや花火、ドローンショーが好評のようで、せっかくなので丸一日時間を取ろうと考え、11日は野球、12日は朝から夜まで万博に行くことにしました。

万博そのものについては…
すでにたくさんの方がネットで詳細なレポートを上げていますので、ここでは割愛します。
ここでは「視覚障害者目線の大阪万博」と、少しナナメから見た感想をお届けしたいと思います。

そもそも万博って?
国際博覧会条約によれば、「二国以上が参加し、公衆の教育を主目的とし、人類の進歩や将来展望を示す催し」とされています。
ざっくり言うと、「世界各国が集まり、最新技術や文化を紹介する博覧会」です。
「博覧会」とは、“見せる”ことが主眼となるイベントです。となると、視覚に障害がある人間にとっては、相性が非常に悪い。…まあ、そう言い出すと、博物館、美術館、水族館、動物園、映画館、スポーツ観戦、日常生活のあらゆる場面がそうなんですけどね。

チケットの仕組みが難解すぎる
これかなりわかりにくい。登録とか抽選とか予約とか、ITに弱い高齢者や障害者や情報弱者にはハードル高め。
最初はテンション低かったので、やっぱり行くのやめようかと思うレベル。チケットだけ買ってしばらく放置。
日にちが近づくと少しずつ準備。事前抽選、3日前予約も済ませ、あとは天気に恵まれるよう祈るのみ。

私たちの見え方
視覚障害といっても見え方は千差万別です。全盲、弱視(重度〜軽度)、視野障害、眼球使用困難などさまざま。
私は視野障害で視野が真ん中しかありません。上下左右が全く見えません。妻は左目が失明、右目も網膜剥離により視野欠損と著しい低視力(0.02)。重度でいうと妻の方が重いですが、障害手帳の等級はどちらも「1種2級」です。人混みや段差や暗いところが苦手で特に妻は少しの暗がりでも見えなくなります。妻が白杖を持ち、私が手を引いて歩くというスタイルで万博に臨みました。

いざ万博
まず目に飛び込んできたのが、万博の象徴「大屋根リング」。
想像以上に壮観で、何も予備知識も持っていなかった妻は「スゴイ、何これ」と驚いていました(そこまで何も知らないで来るのもある意味すごい)。
1周2Km、歩くと大体30分程度。1周ずっと点字ブロックがありました。大屋根リングへは階段、エスカレータ、エレベータで上がれます。2段構造になっていて上段へはスロープを登っていく構造ですがスロープや上段には点字ブロックはありませんでした。敷地はかなり広大で、TDLの約3倍だそうです。この日は薄曇り気温25度、暑くもなく寒くもなく日差しもない、絶好の天候となり、平日にもかかわらず場内かなりゴッタ返して混雑しておりました(後日の発表では来場者117,000人でした)。言われているように雨や日差しを遮る場所が少なく、特に夏の日差しはヤバいだろうな、と容易に想像できます。炎天下に何時間もいたら命にかかわる事態も起こりそうです。多くの人が必須の持ち物に日傘を挙げていますが、これは納得です。ただ、この日傘、人がごった返しているところで使うと先っぽが人にぶつかります。この日は薄曇りでしたがそれでも日傘を差している人が結構いて、かなり当たりました。今後何か大きな事故が起こらなければいいなと思います。杞憂に終わればよいのですが。

最初は入ったパビリオンの特徴をメモって視覚障害者にお勧めを見つけたいと思ってたのですが、途中でやめました。なぜならどこも似たような感じだからです。大画面で映像を見る系、光や振動で体験する系、展示を見る系。これらは視覚障害者にはきびしい内容です。場内を暗くする演出が多く(というかほとんどそれ)、本当に館内の移動が恐怖でした。それでも一旦映像を見る場所につくとスクリーンが大画面なので妻でも映像を見ることができ、それなりに楽しむことはできました。色々パビリオン見て回りましたが、正直どれも同じようで、もういいかなっていう感じになってしまいました。中には触って感じる、五感で感じるを謳っているパビリオンもありましたが、残念ながら自分たちにはあまり響きませんでした。
そんな中、ポーランド館は暗い演出が少なく、明るい雰囲気で花とアロマっぽい匂いで他と違うコンセプトで印象に残りました。

で、万博は視覚障害者でも楽しめるのか? 
障害の程度にもよりますが、障害1級や2級でも重度の場合、「難しい」というのが率直な感想です。
もし、全盲や強度の弱視の人に、万博に行くべきか?と聞かれたら、、、 難しい質問です。どこかへ出かけることによって、エピソードや会話や人と出会いなど必ず思い出が残ると思いますし、まして多くの人にとって一生に一度の大阪万博です。そこへ行くことの価値は大いにあると思います。しかし、大阪万博自体を純粋に視覚障害者が楽しめるかというと正直ちょっと難しいと思いました。総合的に判断すると楽しむよりストレスの方が多くて、あまり積極的にはお勧めできない感じです。
場内は広大で点字ブロックは敷いてありますが、ゴッタ返す中で点字ブロックに沿って歩くのは難しいし、自分がどこにいるのか把握するのは難しく、目指しているところへどう行ったよいかわからなくなります。日常的に白杖を必要とする人が単独で回るのは非常に困難、はっきり言うと無理、絶対同伴者は必要。そしてパビリオンの中はどこも暗く、暗いのが苦手な自分たちはパビリオン館内の移動が本当に恐怖でした(ここは全盲の人にとってはハンデにならないかも知れませんね)。暗くて見えない妻が私の腕にしがみつく、だけど私も見えていないという。同伴者は絶対晴眼者がよいでしょう。私はまだ中心に視力があるので展示物は見えるのですが、妻は見えないので例えば展示物が圧巻で評判のイタリア館で、妻はカラヴァッジョの絵画やダビンチのデッサンも見えません。なので私が写真に撮ってその写真を後でみる、という形です。これではそもそもWEBに載ってる写真をみるのと変わらないな、と思ったり。。。 
私たちのケースではゴッタ返す場内で周りに最大限の気をつかって歩いても予想通り人とぶつかりまくり、人の足踏みまくりでした。普段から人込みに出ると、そうなので慣れっこですが、それ以外の原因のひとつに歩きスマホの人が存外に多いことがあると思いました。これは主催者が地図のデジタル化を推奨していることと、当日の予約システムにあります。当日予約の仕組みは入場して10分後から当日予約が1つできるようになります。予約したパビリオンに入場したらまた次の予約ができます。しかし、ほとんどが「×」です。リロードするとそのたびに状況が変わってポツポツと「△」が出て、タイミングが合えば予約できます。なので常にスマホ見て歩いてる感じの人が一定数います。このあたりの予約の方法も年配の方や障害のある方には不利だと思いました。

優先レーンとその課題
入場した海外パビリオンはフランス、アメリカ、サウジアラビア、イタリア、スペイン、ベルギー、ポーランド、韓国、モナコ、他小さいのもろもろ。人気のパビリオンは数時間待ちとなるのに結構多いと思いませんか? これは大変ありがたいことに「優先レーン」のおかげです。中には設けていないところもありますが、ほとんどの海外パビリオンで「優先レーン」を設けています。障害手帳を有する人とその同伴者、車いすの人、ベビーカーの人、歩くのがつらい高齢者、その他合理的判断により利用できます。この「優先レーン」、規約でルール化されているわけでなく運用は各パビリオンの裁量に任されています。ただ、これが実にゆるいのです。ゆるゆるです。私たちでいうと唯一ベルギーだけは障害者手帳の提示を求められましたが、白杖を持っていると何も提示を求められることもなく優先レーンを利用できました。もちろんほとんどの人が正当に利用させていただいていると思いますが、中にはそうでない方もいるようで、ネットで一部論議を呼んでいます。具体例は避けますが、要は車いすやベビーカーを盾にその他ご一行様が一緒に優先レーンで入れるんですよね。その優先レーンで入場する人たちの分、普通に並んでいる人の待ち時間が更に長くなる訳で、なんだかとても申し訳ない気持ちになりました。だからと言って一緒に来場されている人たちを隔てるわけにもいかないし、難しいところではありますね。私のような仕事をしていると狭窄症や変形性膝関節症などで100m歩くのも大変な人をたくさんみているので、ご本人にとって非常に助かる制度であることは十分理解できますし、こういう制度がなければそもそも来場していない人もいることでしょう。しかし、SNSなどで「5時間待ちのイタリア館に優先レーンで並ばず入れた」とか嬉々とした得意気な書き込みを見るとなんだかなぁ、と思ってしまいます。当日会場で貸し出している車いすとかベビーカーにだれか一人乗せれば同行者全員が優先レーンで入れるわけです。「人間ファストパス」ですね。変な話、健常者でも白杖持っていけば優先レーンで入れてしまうわけです。それと、外見だけで判断されると内部障害など外見ではわからない種類の障害者の方は利用しずらいでしょう。本来の主旨に現状が則しているのか、ちょっと疑問に感じました。優先レーンを使わせてもらった立場で言うのも変ですが、不公平な感じは否めません。こういったことが重なって日常での「スマホ使えるのに白杖持ってて何かの詐欺か」というような偏見にもつながってしまうのかな、と思いました。

夜の万博
夜のライトアップはとても綺麗でした。残念ながら花火やドローンショーは見られませんでしたが、雰囲気は十分に楽しめました。夜の大屋根リングはとても心地よくそこから見る万博の夜景も印象深いものでした。
この日の歩数は28,818歩。

21時まで滞在し、22時過ぎの夜行バスで帰宅。そのまま朝から通常営業という、なかなかの強行軍でしたが、充実した二日間でした。
妻に「一番良かったのは?」と聞いたら「大屋根リング」。つまりはこれが答えですね。

9月にも甲子園に行きますが、万博はもういいかな。お腹いっぱい。でも、楽しかったです。