大阪南視覚支援学校に見学に行ってみた(日本で唯一、柔道整復科がある盲学校)

いつもご愛顧ありがとうございます。
10月16・17日、甲子園のクライマックスシリーズ・ファイナル(CS)に行ってきました。例によって「今年の阪神強すぎ問題」発動で、まったく歯が立たず、ベイスターズの今シーズンは終了しました。結果的に三浦監督の最後の試合を観られたので、それで良しとします。とにかく今年の阪神は最強なので、結果には全く不満はありません。

さて、本題です。
今日は視覚障害者の社会復帰の一助として存在する国家資格養成校、主に「視覚支援学校(旧・盲学校)」について書いてみたいと思います。
今回、大阪府立大阪南視覚支援学校の専修部(専攻科)を訪問し、施設や授業風景を見学させていただきました。

視覚障害者向け養成校の種類
視覚障害者向けに、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師(=あはき師)の国家資格が取得できる視覚支援学校は、全国すべての都道府県に少なくとも1校(多いところは複数)あります。
このほか、国立・市立・私立の学校もわずかに存在します。
さらに、視覚障害者のための大学として「国立筑波技術大学」があります。
養成校が3年課程なのに対し、大学は4年制。時間をかけて高度な教育を受けられ、学士(大卒資格)が得られる点が大きなメリットです。
さらに、盲学校の専攻科は中途視覚障害者が多く年齢層が幅広く、さまざまな経歴の人が学んでおり、学年によっては最年少が40〜50代ということも珍しくありません。
対して大学は全国の盲学校高等部を卒業した若者が多く、若年層には学びやすい環境です。
これらの養成校はすべて文部科学省の管轄ですが、少数ながら厚生労働省管轄の養成施設(例:国立障害者リハビリテーションセンター学院 視覚障害学科)も存在します。

大阪府立大阪南視覚支援学校
今回、大阪南視覚支援学校を訪ねた理由は、ここが日本で唯一、視覚支援学校として柔道整復科を設置しているからです。
3年間の課程を修了すると、柔道整復師の国家試験の受験資格を得られます。

このほか、通常の保健理療科・理療科に加え、理学療法科を含む計4科があります。理学療法科を持つ視覚支援学校も全国的に少なく、したがって大阪南視覚支援学校は「唯一の柔道整復科」と「希少な理学療法科」を併せ持つ、まさに日本最強の視覚支援学校と言えるでしょう。

各科と取得できる国家資格(すべて3年課程)
①保健理療科 あん摩マッサージ指圧師(あマし師)    ※開業権あり
②理療科   あマし師、はり師、きゅう師(あはき師)  ※開業権あり
③理学療法科 理学療法士                ※開業権なし(基本的に病院、リハビリ施設勤務)
④柔道整復科 柔道整復師                ※3年の実務経験のあと開業権あり

全国の支援学校では、まず①を履修し、在学中に鍼灸にも興味を持って②を再履修する「6年間学生」を続ける方も一定数います。
大阪南視覚支援学校では、さらに理学療法科や柔道整復科も履修できるため、最大で12年間在学することも可能です(②を先に履修すれば①は不要なので9年)。
晴眼者(目に障害がない人)は専門学校で昼間に鍼灸科、夜間に柔整科などを同時履修してダブルライセンスを狙えますが、視覚支援学校には夜間課程がないため、それはできません。

入学資格は、①②は大阪府に住民票がある人限定(これは各都道府県に同様の養成校があるので)。③④については大阪府民でなくても入学できます(ただし入学が決まったら大阪府に住民票を移す必要があります)。

アクセスはとても便利、環境も良し
学校へは地下鉄、JR、南海線でアクセス可能で梅田や難波からも一本で来れて非常に便利です。
今回は行きは梅田から御堂筋線で「あびこ」下車。帰りはJR阪和線「我孫子町」を利用しました。
学校内の写真は自粛しますが、建物も設備もとてもキレイで理療科、柔道整復科、理学療法科のそれぞれの臨床室・実習室を、柔道整復科、理学療法科の授業を見学させていただきました。

一般の方は「盲学校」と聞くと何か暗いイメージを持つかも知れませんが(私も最初はそうでした)、大阪南視覚支援学校に限らず私の行った学校もとても明るく優しい空気にあふれています。

柔道整復科の課題
実は、大阪南視覚支援学校に伺うのは今回が2度目です。1度目は私がまだあはき養成校の2年生だった時、卒業後の進路の1つとして柔道整復科とはどういうものか興味があったためです。その日はちょうど学生さんが休みの日だったため授業の見学はできず、学校見学だけさせていただきました。そのとき伺った話で印象的だったのが、以前はあはき師と同様に柔道整復師の資格取得したら即開業できたのが、今後は資格取得後に3年の実務経験が必要になること。そのため、一度はどこかの整骨院・接骨院に就職する必要があり、視覚障害者でしかもある程度年齢がいっていると雇ってくれるところを探すのは一般的に難しい場合があること。それはそうだろうと思いました。江戸時代から盲人の職域で先人も多く、視覚障害者の扱いに慣れているあはき業界と違い、柔整業界は視覚障害者の受け入れに慣れておらず、専門学校卒の若い晴眼者との比較だとちょっと厳しいのかなと思いました。「知り合いのツテなどがあれば別ですが、年齢が高い方の場合は就職についてもあらかじめ考えておく必要があります」と伝えられました。実際、その制度改正により毎年入学定員いっぱいだったのが、入学希望者が激減したとおっしゃっていました。そんなこともあり、その時は進路の選択肢からはずしました。

今回伺った話では、開業に資格取得後3年の実務経験が必要なのは変わりませんが、モデルケースとして2年は柔道整復師として保健医療機関での勤務、1年を接骨院・整骨院で合計3年ということも可能だそうです。しかも3年はフルタイムでなくてもよくてアルバイトでも実務経験になるそうで、少しスタンスが緩くなった印象を受けました。アルバイトだったら年齢が高くでも雇ってくれるところがありそうな気がします(柔整業界のことはよくわかりませんが)。

理学療法科も魅力的ですが、、、
理学療法科に目を向けると、こちらは関東にもありますので大阪である必要はないのですが、施術技術は非常に有用であると感じています。私はすでに鍼灸院を開業していますので、これから3年フルタイムで学校に行って資格を取得する、というのは現実的ではありませんが、あはき師を生業とする者として、理学療法の知識や徒手技術はあはきにも応用できるものが多いと感じています。
私は昨年度、筑波技術大学附属東西医学統合医療センターで1年臨床研修をさせていただきました。そこでは必ず医師が診察をしつつ、理学療法士がリハビリ、あはき師が鍼灸あん摩マッサージを施術するスタイルで、リハビリと鍼灸を平行で受診される患者様も多く、自分の担当の患者さんがリハビリを受けるのを見学することができ、非常に勉強になりました。
鍼灸院をやっていると年配の方はサルコペニア(加齢や疾患などにより筋肉量・筋力が低下し、身体機能が衰える状態)の方が多く、鍼灸で痛みは取れても筋力をつけることはできないので、理学療法の知識は非常に有用だと日々感じています。

もしも、もっともっと若ければ
最初に④柔道整復科、②理療科、③理学療法科、の順に履修します。②の3年で接骨院・整骨院でアルバイトをして実務経験3年の柔道整復師の開業規定をクリアし、③で鍼灸院か鍼灸接骨院でアルバイトしあはきの腕を磨きつつ理学療法を学び、③修了後に鍼灸接骨マッサージ院開業、というのが施術者として最強かなと思います。
理学療法士に関しては、世間で「PT(理学療法士)増えすぎ問題」が囁かれており、資格の優位性はともかく、その知識や徒手技術は習得して損はないと思っています。
全ては仮定の話ですけれど、、、

学校の現状と教材
柔道整復科の現在の生徒数は1年生が1人、2年生も1人、3年生が4人という状況だそうです(理学療法科に関しては全学年で4人)。
柔道整復科の先生からチラシをいただきました。どんどん拡散してください、とのことなので、ここに載せておきます。

ここを見ている方で入学資格(視覚障害で障害手帳取得済み、または進行性の眼の疾患をお持ちの方)のある方は少数かと思いますが、もし気になる方は学校までお問い合せください。親切に対応していただけます。

保健理療科・理療科は全国的に多数の生徒がいるので教科書は視覚障害者用の拡大文字のものがあったり、点字があったり、音声があったり、と視覚障害者に優しい環境がありますが、理学療法科と柔道整復科の教科書にはそのようなものがなく晴眼者と同じ小さな文字の本を使っているそうです。授業のたびに先生がプリントを用意したりとご苦労されているようです。

鍼灸・柔整・整体・マッサージの違いまとめ
世の中には鍼灸院、接骨院、整骨院、整体院、あん摩マッサージ院、カイロプラティック、等、一般の方には区別がつきにくいかと思いますので、まとめまてみます。

・鍼灸院(鍼灸治療院)
はり師、きゅう師の国家資格が必要。
保健適用できますが、疾患が限られ、かつ医師の同意書が必要です。同意に理解のある医師と全く書いてくれない医師がいます。同一疾患で病院と鍼灸の同時保険適用は不可や、手続きの頻雑さもあって自由診療のみの鍼灸院が多いです(私もそうです)。

・接骨院=整骨院(昔の「ほねつぎ」)
柔道整復師の国家資格が必要。
保健適用可能。これが強みです。適用は捻挫・脱臼・骨折・打撲・外傷など急性のもののみ。慢性腰痛や五十肩など慢性の症状には不適用。昔から保険の不正請求がたびたび問題になっています。鍼灸の資格も持っていれば「鍼灸接骨院」「鍼灸整骨院」など。

・あん摩マッサージ院(訪問マッサージ、など)
あん摩マッサージ指圧師の国家資格が必要。
鍼灸の資格もあれば「鍼灸マッサージ院」など。医師の同意書があれば保険適用可能。鍼灸と違い病院通院と同時に保険適用が可能なので、こちらの方が医師も同意書を書いてくれやすい。
あはき法によれば、マッサージを業として行えるのはあマし師の資格を持つ者だけです。厳密にはあマし師の資格がない場合、足つぼマッサージ、オイルマッサージ、タイ式マッサージ、アロママッサージ、等の店名または施術メニューがある店は全て違法です。

・整体院
国家資格なし。誰でも今日から整体師を名乗れます。整骨院と紛らわしいですが全く別物です。普通に無資格の人がやっている場合が多いですが、中には開業権のない理学療法士さんが整体師として開業していたり、少数ですがあマし師が「あはき法」に縛られる(広告規制や店舗の構造(保健所の検査あり)など色々あるのです)のを嫌って整体院として開業してる場合もあり得るので、知識量や技術力は本当に玉石混交です。
一般の方はマッサージ院より整体院の方が上だと思っている方が存外に多くて、ちょっと悲しくなることがあります。

・カイロプラティック
アメリカ・カナダ・オーストラリアなどでは、大学教育+国家資格があり、医療の一分野として法的に認められていて、取得の難易度もかなり高いです。ただし、日本では国家資格制度はなく、民間療法扱いなので誰でも今日からカイロプラクターを名乗れます。施術者が海外での資格を持っているか否かで大きく事情が異なります。

最後に
施設見学や入学相談でご対応くださった先生方、授業中に見学させてくださった先生・生徒の皆様に心より感謝申し上げます。
貴重なお時間をありがとうございました!